2019年11月3日 第8回公開講座
講演・社会啓発
2019.11.03
今年のテーマは 「就労」 でした。
「国立がん研究センター がん対策情報センター がんサバイバーシップ支援部」の高橋都先生と土屋雅子先生のお二人にお出でいただき、がんを経験することと就労との間にはどのような問題が生じるのか、長年の研究で蓄積された結果をお話しいただきました。
高橋先生には成人がん経験者の場合、そして土屋先生には、思春期、あるいは若い成人(17歳から37歳を指すことが多い)の場合、どのような問題が生じるか、職場との関係、あるいは就職試験を受ける場合など例を挙げながら、がん経験者を取り巻く就労問題をお話くださいました。
会場からは小児がん経験者である青年が、何度か転職したことも含め、小児がん経験者であると周囲に話すことについて、自分の経験を話してくださいました。「周囲に自分の病気や病歴を理解してもらうことは大事ではあるが、それに期待するのではなく、理解してほしい人、理解できそうな人にだけ、折を見て話すだけでいいのではないか。あとは社会人として、あるいは職場の同僚としてしっかり自分を見てもらえば、こちらからわざわざ声を大にして説明しなくても、理解者は増えていくと思う。」というような内容でした。落ち着いた、しっかりとした話し方で、明確な意見を述べる姿に力強さを感じました。
成人後の罹患と、小児期での罹患では抱える問題がかなり異なります。心身共に成長発達する過程にある小児期の治療の場合、治療の影響が経年的に現れてくることが考えられます。その影響は一人ひとり異なり、リスクの大きさにも差がありますが、それを心配して不安を募らせるのは無意味です。大事なことは自分がどのような治療を受け、どのようなリスクを抱えているのか、それをしっかり自分自身把握し、理解し、経過観察受診を怠らないこと。そうすれば不安が減少し、自信をもって前進できるし、もし問題が見つかっても、早期の問題発見、対処が可能となり、就職の時に、もし病気について質問されても、しっかりと説明することができるでしょう。
今回の講演の内容は来年5月に発行する会報誌に掲載しますので、ぜひ、皆さんお読みくださいね。
(文責 井上)