5月9日 千葉県子ども病院 母の日

患者家族への支援

2018.05.09

  • 5月9日 千葉県子ども病院 母の日

毎年恒例、ビーズアクセサリーでお母さんへのプレゼント「ブックマーク」を作りました。
講師は、子ども病院で小児がん治療を3回も乗り越えた経験者の女性で、ミルフィーユスタッフとしても活動しています。
毎年、この日のために寝る時間を惜しんで、たくさんの種類のパーツを準備して来てくださるのです。
テーブルいっぱいにキラキラのビーズや綺麗なレジン細工が並べられると、お母さんたちは気に入ったビーズを子どもにリクエストして、自分のためのブックマークを作りました。
一番驚いたのは、作るのを面倒くさがって渋っていた中学生の男子が、「楽しい!」を連発して、「もっと作りたい」と夢中になってしまったことです。 男の子も女の子もお母さんも時間を忘れて作る姿は本当に楽しそうでした。
ブックマークが出来上がった後、お母さんたちは治療中や退院後の体験談をじっくりと聞くことができ、これからの生活を想像して勇気をもらえたのだと思います。

ビーズアクセサリーの講師で来てくださった中村さんの感想を載せましたのでご覧ください。(文責 中島)


H30.5.9 ブックマーカー作り教室の開催

「ただいま~」
病棟のナースステーションの前を通る時の私はいつもそう言って、外泊から帰ってきていました。そのあとすぐに処置室の前で外泊中にどれだけ体重が増えたのかを量ってから自分の部屋に戻ります。ベッドで身支度を整えたころ、点滴スタンドが私めがけてやってくる音が聞こえます。そうすると私は観念して胸のIVH(中心静脈栄養)という点滴用の管を差し出して、点滴につながれるのを待つのでした。
 あれから21年が経過して、今は小児がん経験者として病棟の支援事業に参加をさせていただくことができ、ナースステーションの前を通る時に「本日はよろしくお願いします」と挨拶します。この「本日はよろしくお願いします」の瞬間というのは、言葉であらわすことはできませんが私の心の深いところに響きます。発病した13歳から骨髄移植をした20歳までの病棟で過ごした思いが、長い時間を経て思い出されるからなのかなと思います。
 毎年恒例になったアクセサリー教室ですが、今年は「ブックマーカー作り教室」を開催しました。少しでも好みに近いものが選べるように、目で楽しめるようにとさまざまなデザインのパーツを用意しました。子どもたちは集中して材料を選び、思い思いに組み合わせて母の日に贈るブックマーカーを完成させることができました。「もう1個つくりたいな」と言ってくれた男の子。「楽しかった?」と聞くと帰ってきた反応にびっくりしました。「楽しい!楽しい。楽しい。千回は言える。」と言いながら、膝の上に置かれていた手のひらで膝をポンポンと叩くように楽しさで溢れている姿をみせてくれたからです。
自分にも経験がありますが、入院中はこのようなささやかなイベントで、いつもと違う一日を過ごしたことが、心の大きな刺激となることがあります。私は抗がん剤の治療が始まると副作用で吐き気が止まらなくなり眠りながらも嘔吐してしまうといった具合で、体力の消耗も激しくベッドから出ることができなくなることが多い患者でした。起き上がることも難しいのでとにかく何もできないわけですが、その辛さをなんとか乗り切らなければならないので、私は楽しく過ごしたときの気持ちを思い出したり、これから待っている楽しいことを想像したりすることで打ち克つ!ということをしていました。周りから見れば吐き気に負けて弱々しく見えていたかもしれませんが、私は心の中ではとても激しく闘っていつも勝っていました。治療が終わった翌日などは吐き気も消えるので、嬉しさのあまり手のひらで膝をポンポンとするのはもちろん、全身をつかって喜びを表現していたことを思い出しました。
 子どもたちは、作ったブックマーカーにメッセージを添えて、大事な人への感謝の気持ちをかたちにして贈ることができました。本に挟んだブックマーカーで、折にふれて今日の楽しかった時間を読み返せるよう祈ります。(文責 中村)