5月9日 千葉県こども病院 母の日
患者家族への支援
2019.05.09
今年の母の日はビーズの指輪を作りました。
毎年来ていただいている講師の中村さんは子ども病院で3回治療したCCS(小児がん経験者)で、病棟スタッフとも顔なじみです。
10種類以上の指輪の見本からプレゼントしたいデザインを選び、手作りの説明書を見ながらビーズの小さな穴にテグスを通します。小学生の男の子は黙々とひとりで2個目を作り上げて満足そうでした。
治療による脱毛を心配している女の子に中村さんを紹介して、「髪が抜けてもこんなに素敵な髪が戻るのよ」と話すと、つやつやで真っ黒なストレートヘアをじっと見てから、大きくうなずいていました。
この出会いで女の子はどれだけ勇気をもらえたことでしょう!
子どもたちも家族も、アクセサリー作りで気持ちがほぐれ、元気になったCCSに会えて大きな希望をもらえました。
次に中村さんの感想を載せます。 (文責 中島)
「母の日におもうこと」
当時13歳だった私は急性骨髄性白血病を発病し、化学療法を受けていました。
毎回抗がん剤の副作用は強く現れ、数日間嘔吐し続ける私の背中を一生懸命にさする母がいました。『さする』というと苦痛を和らげるために軽く摩擦する程度ですが、本当をいうと、母は私の背中に力強く手を押し当ててゴシゴシと痛くなるくらい『こする』といった具合でした。さらに、こすりながら『頑張れ頑張れ』 と言うので、これ以上頑張れる状態ではないのに無茶なことを言うなぁ、、、とイライラしたものでした。
でも、当時、頑張ればどうにかなる状態ではない私を目の当たりにした、母の悲しみや苦しみにふれた瞬間であったのだと思います。私の中に、確かに何かを残したようで、今でもあの場面を思い出すことがあります。私を救おうとした母が自分自身に、『頑張れ頑張れ』と言いながら、ありったけの力で背中をさすることで確固たる決心をしてくれていたのだろうと、今になってから伝わってきます。
あれから30年経ってしまったけれど、『おかあさん あのときはありがとう』を伝えたくなる日です。
さて、毎年恒例となった母の日イベントに今年もアクセサリー講師として参加させていただきました。今年は指輪作りを体験してもらいました。小さいビーズをテグスで編んでいくのは根気がいるのですが、みんな最後まで集中して頑張りました。
出来上がった指輪は、日ごろお世話になっているかたへ渡します。
贈られた指輪を手にした方たちは、子どもたちが普段秘めている『ありがとう』を感じ取ったことでしょう。
入院中、病気は受け入れて向き合っていくしかないのだとわかっていても、入院していることによって好きなことを奪われたりしていくことが辛く、痛い検査や治療に耐え続けているうち、負けそうな気分になり落ち込んでしまったことがありました。そんなときは、周りの人の言葉も重荷となり、善意に囲まれていながら境界を感じてしまう自分が嫌になりました。でも、そのようななかでも、誰かのために、何かのために頑張りたいという、その気持ちを大事にしていきたいという願いは強かったです。
きっとみんなぐったり疲れてしまったかと思いますが、今日の限られた短い時間で、誰かのため、何かを伝えるために集中してものづくりをしたことが、それぞれの思い出の一日になったらよいなあと思います。
(文責 中村)