2011年10月8日 幕張総合高校看護科での講演

講演・社会啓発

2011.10.08

千葉市幕張にある幕張総合高等学校看護学科で、お話をしてきました。
対象は看護学科の4年生、5年生の約>80名、皆さん、近い将来、看護師として社会に出る方々です。90分もいただきましたので、いろいろ、ゆっくりとお話ができました。自己紹介の後、話を始める前に、生徒さん方にマイクを向け、質問をしてみました。「小児がんという言葉を聞くと、まず何を感じたり、思ったりしますか?」という質問です。皆さん、一様に「ショック!」、そして数名の方は「死んじゃうかも」、「かわいそう」という答が返ってきました。予想通りでした。医療の世界に入っていこうとする方々でも、そう感じるのだなあと再認識しました。昔と変わらない“がん”に対するイメージなのです。手ごわい病気ではあっても、元気になって社会に出て行く子どもたちがこんなにたくさんいるのに・・・、治癒率は30年前と比べて格段の差なのに・・・、大人と違って治癒率はとっても高いのに・・・と。「小児がん」への社会的な理解を進めていくこと、これが私たちの活動の中でとても重要であることをさらに強く感じました。生徒さんに聞いていただいた話の中心は、子どもに小児がんの診断がついた親の気持ちです。診断がついたその時の気持ち、入院生活が始まったころの気持ち、その生活に少し慣れ始めたころ、そして退院の日が近づき実際に退院するころの気持ちというように4つの時期に分けてお話ししました。皆さん、話の内容をノートに書き留めたりしながら熱心に聴いてくださいました。時々眠気に襲われている方もいらっしゃいましたが、蒸し暑い中、それも無理ありませんよね。さいごに私たち患者の親が看護師の方々に望むことをお伝えしました。がんに限らず何の病気であっても、その病気とたたかっている子どものそばにはそれまでその子を育んできた親がいます。体は別々でも、その子とその親は、実際には一つの存在です。年齢が低ければ低いほどその一体感は大きいのです。そこが成人患者と小児患者の大きな違いでしょう。小児看護に携わる看護師の方々には、このことをしっかりと心に刻んでいただきたいとお願いしました。うるさい親、何もわからない、わかろうとしない親、インターネットで自由に情報を入手し、それを振りかざし、言いたい放題の親、モンスターペアレンツという言葉もあります。そういう親への対応はさぞかし大変でしょうし、神経をすり減らすものだと思います。でも、そこをわかっての上で親との信頼関係を築いていただきたいのです。まだ結婚されていない、結婚されていてもお子さんがない、育児経験がないから…と、看護師の皆さんに親の気持ちなど分かってもらえないと感じる親は多いです。これは事実です。でも、わかろうとする気持ち、わかろうとしている姿勢を見せてくださると、親はとてもうれしいというのも事実です。育児経験がなくても私たち親子を応援してくださっている・・・・と感じるのです。そこから信頼関係が生まれるのです。わが子が重大な病気になると親は何もしてやれない自分の無力さにいらだちを感じます。右も左も全く分からない世界へ、子どもと一緒にいきなり放り込まれ、ただ、ただ茫然と立ちすくむ…。そして不安だけが大きくのしかかる・・・。どこかにつかまってしっかり立とうとしても、何につかまったらいいのか…。そのような時に、どんなに若くても、看護師としての経験年数が少なくても、一緒に手をつないで歩こうとしている人がいる…。これを感じることができた親は暗闇の中、小さな灯を見つけたような気がします。親でなくても親心をわかろうとする姿勢、これを看護師さんに求めたいのです。ある患者さんのお母様は「育児経験のない看護師さんが子どものプライマリーナースだったが、彼女が一生懸命、親の、そして子どもの気持ちをわかろうとする姿勢に元気づけられ、つらい時期を乗り越えることができた」、今でも感謝していると言っておられます。高度先進医療の中、医療技術はどんどん進み、それに追いつくこと自体が大変にもかかわらず、看護師の皆さんの労働環境は必ずしも恵まれているとは限らないようです。それでも時間があれば寝る時間も惜しんで学会に出かけたり研究に力を注いだりとがんばっておられる看護師さんを数多く存じ上げています。本当に心から感謝申し上げます。そして私たち患者の親も、子どもの将来を見据えながら、応援してくださる医師や看護師の方々と、頼るのではなく一緒に治療に取り組む姿勢を示さなくてはと、看護師の卵さんの皆さんにお話ししながら再認識した時間でした。幕張総合高校、看護科の皆さん、蒸し暑い中、真剣なまなざしで私の話を聞いてくださってありがとうございました。

NPO法人ミルフィーユ小児がんフロンティアーズ  
井上富美子
中島弥生

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