2012年4月20日~4月24日 SIOP ASIAに参加しました

講演・社会啓発

2012.04.20

SIOP ASIAは国際小児がん学会SIOPのアジア支部によって運営されている小児がん学会です。千葉県がんセンター所長で神経芽腫研究の第一人者でいらっしゃる中川原章先生(当会副理事)が、プレジデントをされておられます。今年はインドネシアで、アジア各地、そしてヨーロッパからも、多くの医師、看護師など小児がんに関わる方々が参加しました。



また同時開催される親と経験者の会(ICCCPO)にも多くの家族や小児がん経験者が集まりました。
アジアにおける小児がん闘病の実情については、論文や学会での報告で頭では知っているつもりでした。しかし聞くと見るとでは大違い。これまで頭の中だけで知っていたことを現地の医療者の方々からの報告やお話で実感しました。
もともと発症率の低い小児がんです。先進諸国でも、専門医師でなければ、小児医療の分野で経験を積まれた医師でも、小児がんの患児に遭遇することは少なく、ましてや治療体験のある医師となるとますます少なくなるでしょう。それでも小児がんの治癒率は70%から80%、急性リンパ性白血病に至っては90%を超えるようになっています。それでも日本では小児がんが小児の死亡原因の第2番目です(1位は事故)。小さな命は弱く、消えやすかった昔とは異なり、小児医療の進歩のおかげで、子どもがよくかかる病気は治せるようになったという素晴らしい環境があるという証で、この世に生を受けた小さな命が大きく育つ環境にあると言えます。
これに比して発展途上のアジア諸国ではどうかというと、例えばインドネシアでは小児の死亡原因が成長発達不良、感染症、下痢がほとんどだそうです。小児がんはその他の病気と1つにまとめられていました。つまり日本や先進国では当然治癒するはずの病気も治すことができないのです。小児がんの診断以前の問題があることを実感しました。
背景には経済的、社会的問題が大きく浮かびあがっています。健康に関する教育の問題も大きいようです。入院の際の病室がファーストクラスからフォースクラスと4段階で差別があります。治療には差がないと、ある看護師の方がお話されていましたが・・・。
日本では国民皆保険となっているだけでなく、難治性の小児慢性疾患は無料で治療を受けられます。インドネシアでは保険制度が不十分で富裕層しか加入しておらず、かなりの貧困と認められている場合、国が医療費をカバーしますが、完全な貧困でもないが経済的に余裕があるとはいえない層への援助はないそうです。
小児がん治療技術の向上はもちろんと言えども、その前に衛生面に関する国民の意識向上のための教育活動が望まれていると、ある医療施設の看護師長さんがお話されていました。
同じアジアに住む日本人として、アジアの仲間たちとどう手を結び、一緒に前進していくべきなのか考えさせられた今回の学会でした。